伊那市のここがすごい

\伊那北高校生が取材しました/(株)ディーエルディーがつくる“ 地球にやさしい、火のある暮らし ”

株式会社ディーエルディー

(文・伊那北高校1年 飯島沙織)

伊那市は「伊那市50年の森林(もり)ビジョン」を平成28年に策定し、市民生活と共生する森林(もり)づくりを進めてきました。その中で重要視しているのが、「木質バイオマスの利用促進」です。もともと、伊那市は薪ストーブの設置率が多い地域。全国的な普及率がまだ1%にもはるかに満たない中で、伊那市の普及率は約5%。数にして約1500戸もの家庭に、薪ストーブが設置されています。その立役者である事業者のひとつが、伊那市で30年以上前から薪ストーブの輸入販売を行ってきた(株)ディーエルディー(※以下dld)です。今回、その取り組みについて、「伊那市の自然が大好き」だと語る、伊那北高校1年の飯島沙織さんが取材。dldがどのようにして薪ストーブの普及を図ってきたのか、高校生の目から見てdldの取り組みはどう映るのか、そして伊那市における「火のある暮らし」の魅力とは―? 飯島さんにまとめてもらいました。(編集部より)

取材をしてくれた伊那北高校1年の飯島沙織さん(2022年3月現在)

伊那の自然がいつまでも豊かであって欲しい

私は生まれてからずっと、伊那で暮らしてきました。家に薪ストーブはありませんが、木を割り、庭先で焚き火をしたり、毎週のように釣りに出かけたり、とにかく自然が大好きで、生まれ故郷、伊那市の自然がいつまでも変わらず、豊かであり続けてほしいと感じています。この先も、自然に近い場所で生活していきたく、いずれは森林に携わることのできる仕事に就きたいと考えています。

伊那から発信、斬新な薪

伊那市は、多くの人がバイオマスエネルギーを使用する日本有数の街です。(株)dldは、その伊那市に本社を構え、ストーブ用の薪、薪ストーブの販売・施工を行う会社です。お話をお聞きしたのは、(株)dld副社長の白鳥政和さん。伊那市の森林(もり)に関わるさまざまな話を聞かせてくれました。

取材中の様子。右が副社長の白鳥政和さん

現在、長野県の人工林のほぼ半分を針葉樹であるカラマツが占めています。戦後、将来の需要を見込んで日本各地でスギやヒノキなどの植林活動が行われる中、長野県ではカラマツが選ばれ、植林が行われたためです。とくに伊那市は顕著でした。そして今日、主伐期を迎えていますが、ねじれが多く、ヤニを含むマツ(天然林のアカマツやカラマツを含む)は時代とともに使用用途が限られ、放置されてしまっていることも少なくありません。そこで、(株)dldでは地元である伊那を豊かにしていくために、使い道のなかったマツをストーブ用の薪に使うことを考えたそうです。白鳥さんは、「ストーブ用の薪には広葉樹を使うことが当たり前であった時代に、針葉樹であるマツを薪に使うことは誰も考えつかないことだった」と教えてくれました。

しかし、固定概念を疑い、周りの意識を変えていくことは、本当に大変なことだったといいます。そこで、dldが取り組んだのが、薪の宅配サービスです。契約している家に、近くのストックヤードから薪を配達して、一定期間に消費された分だけのお金を受け取り、新たに薪を補充するというサービスです。薪ストーブを使用していくうえで必要不可欠な薪ですが、この薪を手に入れて自宅まで運んでくるという作業はかなり手間のかかることでした。その手間を解消してくれる素晴らしいサービスです。その宅配サービスで使われたのが、カラマツやアカマツの薪。放置されていたマツの木が使用される場所が作られたことにより、止まっていた自然のサイクルが再び回り始めました。「SDGs」という言葉が浸透してきた今でこそ「エネルギーの地産地消」が意識されるようになりましたが、この活動を今から15年も前に始められているのだから驚きです。

薪宅配サービスの見本

私がdldに伺ったとき、まず案内されたのは、この「薪宅配サービス」で使う薪のストックヤードで、そこには見わたす限り薪が一面に積まれていました。本当に壮観な眺めでした。他にも、最新のドイツやデンマーク製の薪ストーブや、焚き火の小道具なども見せていただきました。私も、家に薪ストーブが欲しくなりました。

伊那市の木からつくられた薪のストックヤード

薪ストーブに隠された不便益とは

ボタン一つでエアコンが部屋を暖かくしてくれる今の時代、わざわざ木をくべて、火を灯し、暖をとる薪ストーブが使われる理由はなんでしょうか。地球温暖化が警戒視されている現在、二酸化炭素は地球温暖化を進める原因の一つだと言われています。一見、薪ストーブは木を燃やし、二酸化炭素を排出するため環境によくないと思われがちですが、それは間違いです。その木は空気中の二酸化炭素を吸収しながら成長したものであるからです。つまり、木は一定量の二酸化炭素を固定しており、その二酸化炭素は、また新しい木に受け継がれていくわけです。伊那で消費される薪を伊那の木から作れば、エネルギーロスも少なく、運搬時に排出される二酸化炭素排出量もミニマムとなります。地産地消がこれからの時代にとって大切で、必要であることがよくわかりました。この意識を人々のあたりまえにしていかなければいけないと感じました。

様々な分野への挑戦

(株)dldのテーマは「火のある暮らし」です。生きていくために必要だった「火」を、現代人の憩いの場に変えているように感じました。薪ストーブはもちろん、ふるさと納税の返礼品として薪を贈ったり、火を囲みながら楽しく食事をするバーベキューツールの販売、さらには疲れを癒す薪焚きのサウナの輸入販売にまでも携わられています。ふるさと納税の返礼品としての薪も、薪の生産が少ない他地域にとっては価値の高いものであり、高評価だったようです。

今回、自分たちのあたりまえを見つめなおすことは世の中に変化をもたらす第一歩だと感じました。「火のある暮らし」は充実しているように思えます。私は休日によく焚き火をします。心が癒されるよい時間です。友達と火を囲み食事をするのはとても楽しいです。「火のある暮らし」、それは人と人とのつながりを深め、生活に華を添えてくれるものだと感じています。

伊那市ふるさと納税の返礼品として贈られる薪

私は自然豊かな伊那が大好きです。伊那の地で育ったものを伊那で使い、生活する。この先も私は、そんな暮らしをおくりたいです。伊那市で育った木が薪となり、人の手に届き、生活の中で使われていく過程を通して、伊那市の自然の豊かさを改めて感じ、見つめなおすことができました。(株)dldは、私たちの生活に自然の恵みを添え、暮らしの豊かさを生み出してくれる会社です。

伊那市産業振興プロジェクト 編集部

「伊那谷の産業と暮らしを豊かにする」をキャッチフレーズに、様々なコンテンツを制作しています。