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ワークショップ「経木をつかって石仏灯ろうを作ってみよう」開催レポート

伊那市観光協会が主催するワークショップ「経木をつかって石仏灯ろうを作ってみよう」が2022年10月16日(日)、伊那市alllaで開催され、市内の小学生を含む10グループ、約30名が参加しました。

灯ろうのモチーフとなったのは、江戸時代、高遠藩領を拠点に全国で活躍した石材加工職人「高遠石工(たかとおいしく)」の石仏です。参加者は、主催者が準備した石仏の下絵を元に自由に絵を描いて経木に貼り、世界に一つだけの灯ろうを完成させました。製作した灯ろうは、11月5日(土)、6日(日)に建福寺(高遠町西高遠)で開催する「建福寺 秋のライトアップ」のイベントで参道に並べ、来場者の足元を照らす計画です。この記事では、ワークショップ当日の様子をレポートします。(文・産直新聞社 上島枝三子)

世界に一つだけの“石仏灯ろう”を作る

モチーフとなる石仏の紹介をする観光協会の丸山さん

「みなさんは、本物の石仏を観たことがありますか?」
イベントの冒頭に主催者が参加者に問いかけると、約半数の方が「観たことがある」と答えました。参加したのは、市内の親子連れなど約30名です。「高遠石工」の故郷である伊那谷には、先人が手掛けた多くの石造物が今もなお街の至るところに大切に残されています。しかし、その存在や歴史的背景を知っている人はそう多くありません。伊那市観光協会では、高遠石工の石仏を高遠地域のみならず、これまで石仏に触れる機会のなかった子どもたちやその家族にも広く親しんでもらおうとこのイベントを企画しました。

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灯ろうのモチーフとなったのは、高遠石工の作品の中で人気投票No.1に選ばれたこともある勝間の「大聖不動明王」や、石仏巡礼の聖地とも言われる建福寺の「地蔵菩薩」、「西国三十三所観世音菩薩」など全部で5種類。参加者は、その中から好きな絵を選びトレーシングペーパーを重ね、なぞったり、複数の絵柄を組み合わせたりして黒・赤・青・緑の油性ペンを使って自由に絵を描きました。これまで石仏を観たことがなかった参加者も、下絵をなぞることで石仏の表情や持物(じもつ)などを興味深げに観察していました。自分流にアレンジしたり、文字を書き込んだり、色を塗ったりと、同じ画材を使っても一つとして同じものがない世界に一つだけの石仏灯ろうデザインを描き上げました。

色を塗ったり、文字を入れたりしてオリジナルのデザインを作り上げた

経木で灯ろうを組み立てよう

材料の経木。自然由来の優しい風合いが特徴

次はいよいよ灯ろう本体を組み立てます。材料は、伊那市の森の木で作った「経木(きょうぎ)」です。「経木」とは、木を薄く削り乾かしたもので、日本では古くからおにぎりやお肉などを包む梱包材として使用されてきました。プラスチックの普及で活用の機会が減っていましたが、環境問題などが取り沙汰される今、改めてその価値が見直されている注目の素材です。伊那市でも、経木の活用に積極的に取り組んでおり、今回の灯ろう作りの素材に選んだというわけです。

組み立て方のコツを説明する主催者

作り方はまず、同じ大きさに切った経木3枚を両面テープで留め、その上下に帯状に切った経木を貼って補強します。そこに先ほど絵を描いたトレーシングペーパーを糊で空気が入らないようにしっかり貼り、筒状に丸めて両面テープで留めます。最後に、光源になるライトが入ったペットボトルにかぶせて完成です。

参加者は、経木の木目や手触り、木の香りを確かめながら、経木が裂けたり貼る際に曲がったりしないよう慎重に作業していました。

親子で声を掛け合いながら作業する参加者
灯ろうづくりを地域おこし協力隊の2人が優しくフォロー
地域おこし協力隊のお姉さんに手伝ってもらいながら、慎重に灯ろうを組み立てる子どもたち

全員が完成したところで主催者が部屋を暗くすると、会場から思わず「おぉ〜〜〜!」と歓声が上がりました。経木の優しい風合いに個性ある手書きのイラストがくっきりと浮かび上がります。親子でお互いの絵を誉めあい写真を撮ったり、他の参加者の作品を観たりと笑顔いっぱいのイベントになりました。

参加者が製作した灯ろうが、会場内を優しく照らす
参加者が製作した灯ろう。経木の木目とオリジナルのイラストが美しく浮かび上がる

建福寺 秋のライトアップ「石仏のきらめき 経木のあかり」

この日作った灯ろうは、2022年11月5日、6日に建福寺で行われるライトアップイベントの際に参道に並べ、訪れた人の足元を照らす計画です。今回のワークショップで作った作品のほか、高遠小学校の児童の作品なども合わせて100基ほどが並べられる予定です。同観光協会は、「灯ろう作りをきっかけに、高遠石工に興味を持って実物の石仏を観に訪れるきっかけになってくれたら嬉しい」と話しています。ぜひ、足を運んでみてください。

作った灯ろうはライトアップイベント後に製作者にお返しします。作った思い出と共にご自宅で楽しんでもらえたら嬉しいです。